Suprime-Camで使用する静電容量型近接センサーの迷光量のテスト

1998年2月4日
Suprime-Cam Group
小宮山裕、古沢久徳

Suprime-Cam用大型シャッターのプロトタイプを1996年WHTで使用した際、 赤外センサーから発せられる迷光が問題となった。 その後、小宮山、八木で代替センサーを探し、SUNX社製静電容量型近接センサー GXL-8 型のものが最適であるという結論に達した。 しかし、このセンサーには動作表示灯がついており、これの発する光をどうにか しなければならない。ということで、黒色の opaque な物質で表示等を隠すことに よって、少なくとも目で見て光の洩れがないことを確認した。 今回は実際CCDを使って光がどれくらい発せられるかを1996年WHTで使用した 赤外センサーとの相対値を求めた。

測定は、マグナム望遠鏡で使用する15色カメラのオートガイダー用CCDカメラを使い、 センサーとCCDの相対位置を一定として行なった。 赤外センサーをそのままおいたものと近接センサーの表示灯部を2mmの黒色RTVゴム (コニシ社製バス・タイル水洩れ防止用バスボンド)で覆ったものを比較した。 なお、赤外センサーのダイオードが発する光は波長950nmを中心とする 半値全幅〜40nmのGaussian型のスペクトルをしている(SHARP社の資料参照)。 一方、近接センサーの表示灯の光は、詳細は不明だが目で見て赤い色をしているため、 波長600nmあたりを中心とする光だと思われる。 またCCDの感度も今回使用したもの、モザイク二号機のものは同じだと仮定する。 実際の感度曲線は二つのCCDでそれほど違いはない。 (Suprime-Camでもそれほどの違いはないと期待している)

データ取得

赤外センサーのデータ
近接センサーのデータ

この結果、迷光の量は、

I(old sensor) = 48.64  t - 4.72  (ADU)
I(new sensor) =  0.072 t + 0.431 (ADU)
となり、新しい近接センサーでは赤外センサーに比べて迷光量は 0.15 パーセントになると期待される。ただしCCDの感度は同じとする。

考察

黒RTVで表示灯を塗りつぶした近接センサーでさえも、わずかではあるが、 迷光が出ていることが分かる。これはセンス面(金属が近付いてきたことを 感ずる面)からの微妙な光の洩れではないかと考えられる。
しかし、GXL-8 型近接センサーは、近接時 ON/OFF の2タイプがある。 現在は近接時 OFF タイプを使用しているが(つまり表示灯が光っている センサーの数が多い)、近接時 ON タイプに変更し、 制御回路を組み直すことでこの値は減少させることができる のではないかと考えている。

迷光の量がSKYに対してどれ位の大きさになるかを見ると、 WHTのBバンドのデータでは、例えば SKY〜1000 にたいして 迷光〜120 で、迷光は SKY の 12 パーセントあることになる。 これが、表示灯を黒に塗りつぶした近接センサーでは 迷光〜0.18 になると期待される。 残念ながら赤外センサーの放射する光の中心波長のあるZバンドの データが手元になかったのでそちらは良く分からないが、 Zバンドが SKY が明るいため、さらに問題ないと考えられる。
一方 SKY の小さい狭帯域撮像の時には迷光の問題が深刻になってくると考えられる。


Suprime-Cam Group / Yutaka Komiyama