主焦点ユニット内において発生する熱の熱源としては、
CCD 冷却のための冷凍機が発生する熱、
エレクトロニクスの発する熱、
可動部であるシャッター、フィルター交換機構のモーター、ドライバーの発する熱、
が考えられる。
またこれらの熱源は、カメラ固定用の支円筒(通称ドカン)の内側にあるものと
外側にあるものに二分することができる。
以下では個々の熱源について発生する熱量を概算していく。
冷凍機が消費する電力は cold head の温度により変わってくるが、
cool-down 時にはフルパワーで運転しているため約 60 W の電力を消費している。
この時は head の冷却による排熱も同時に行なわれているので、
60+3 W 程度の熱が発生していると考えられる。
−100°まで冷却した時に冷凍機は必要とされる排熱能力
(3W@−100°)をメーカー規定値 30 W の電力投入で達成できるので
一旦冷却された後はこの状態で運転されているものと考えられる。
この時は 30+3 W の熱が発生していると考えられる。
\dot{Q} = 63 W
= 33 W
Suprime-Cam Final Design Review 資料によると、CCD 1つ当たりのエレクトロニクスの
発熱は約 1 W と見積もられるので、10 つの CCD を使う Suprime-Cam では
約 10 W と見積もられる。
\dot{Q} = 10 W
モーターからの発熱は負荷の大きさ、回転数、などによって変わってくるため
投入電力から負荷を動かすために使った仕事を差し引いた分がすべて熱に変わる
という仮定をして最大値を示すこととする。
トルクが T(= F r )、回転数がν(= v/r )の時、モーターの仕事率は、
T ν であることを使って負荷を動かすために使った仕事率を求める。
シャッタープロトタイプ機に関するレポートより、安定してシャッターが動く
入力パルス周波数として 900 Hz の場合を考える。
オリエンタルモーター総合カタログより、この時の PK266-02A のトルクは
約 0.7 N m であり、1パルス1.8°なのでモーターの回転は 4.5 Hz である。
従ってモーターの仕事率は 0.7 × 4.5 = 3.15 W である。
またこの時モーターには 24 V で 1.7 A の電流が流れることから、
モーターから発生する熱の最大値は以下のように見積もられる。
\dot{Q}_{max} = 24 × 1.7 - 3.15
= 37.65 W
フィルター交換機構についている熱源としては、エレベーターを上下させるための
モーターとフィルターを出し入れするための超音波リニアーアクチュエーターがある。
前者はシャッターのところで述べたものと同じと仮定し、
ここでは後者について考える。
すでに製品化されている L-50 についてはカタログに示されているように
30 V、30 mA の入力に対し、例えば 100 mm/s の速さで動かした時
20 gf のトルクが出ることが測定されている。
シャッターのところと同様にして投入電力と仕事率を計算すると
\dot{Q}_{in} = 30 × 0.03
= 0.9 W
\dot{Q}_{W} = 20 × 10^-3 × 9.8 × 0.1
= 0.02
となりほとんどの投入電力が loss されていることが分かる。
現在 Nikon で開発が進んでいる L-100 については
まだまだ不明な点は多いが、回路入力が 12 V、0.2 A であるそうである。
L-50 ではほとんどの投入電力が loss されていることを考えると、
ほとんどが熱に変わると考えて良いので
\dot{Q} = 12 × 0.2
= 2.4 W
支円筒(ドカン)の内側には、冷凍機とエレクトロニクスが入る。
現在は冷凍機を2台使用することになっているので、
支円筒(ドカン)の内側で発生する熱量は以下の表のようになる。
発熱(W) 平常時 フル稼働時
冷凍機 66 126
エレクトロニクス 10 10
合計 76 136
支円筒(ドカン)の外側には、シャッター、フィルター交換機構のモーターがある。
しかしこれらのモーターはすべてが同時に動いていることは全くなく、
発熱(W) 平常時 フル稼働時
シャッターのモーター 37.7 75.3
超音波リニアーアクチュエーター 9.6 57.6
フィルター交換機構のモーター 75.3 75.3
合計 122.6 208.2
支円筒(ドカン)の内側はフル稼働に備え 136 W の排熱能力が必要である。
また支円筒(ドカン)の外側はすべてのモーターが同時に動くことはなく、
またモーターの稼働時間がそれほどあるわけではないので、
100 W もの排熱ができれば十分過ぎると考えられる。
今回は動いていない時にモーター(ドライバー)からの発熱がどれほどあるのか
つめられていない。主焦点ユニットの排熱能力が上記の値を十分にクリアしているので
あれば問題ないが、ギリギリの場合はもっと正確な値を出す必要がある。