ファーストライトデータ

1999/03/30 作成 (嶋作)
■1999/03/30
R(Suprime) と F702W との違い

(1) レスポンスカーブ (filter + CCD QE)
実線: R(Suprime)
点線: F702W
     F702W は R(Suprime) に比べて感度が長波長側に伸びている。
     この差異は星や近傍銀河の測光にはあまり影響を及ぼさない (なぜならこの辺りの
     波長でスペクトルが滑らかだから) が、4000 A break が見かけ上 6000-7000 A に
     来るような遠方銀河の測光には大きな影響を及ぼす。すなわち、F702W のほうが
     より長波長側に感度を持つ分、4000 A break の長波長側を引っかけてしまい、
     見かけ等級をより明るめに見積もる。
(2) R(Suprime)-F702W を z の関数として描いた図
     この図は、E から Im の銀河に対し、R(Suprime) での等級と F702W での等級の
     差を赤方偏移の関数として描いたものである。銀河には進化効果は入れていない。
     すなわち、近傍銀河を単に赤方偏移させただけである。
     z < 0.5 では銀河毎の R(Suprime)-F702W のばらつきは小さいため、一律な補正で 0.1 等
     以下のエラーで等級の変換ができる。
     z > 0.5 では銀河毎のばらつきが大きくなる。4000 A break の大きい早期型の銀河ほどやっかいな
     振舞いをする。
(3) R(Suprime)-F702W をカラーの関数として描いた図
  • as a fn of B-V (星)
  • as a fn of B-V (銀河)
  • as a fn of R-J (銀河)
         この図で、Gunn & Stryker stars は銀河系の星、銀河は (2) で使った E - Im 銀河である。
         遠方の銀河については、カラーの情報を使っても R(Suprime) と F702W の間の等級の変換は
         難しいことがわかる。
         なお、星も銀河も >8000 A での SED のデータがないので、low z での R-J は計算できなかった。
    

    (4) 考察
         R(Suprime) の画像と F702W の画像を重ね合わせて出来た画像は、R(Suprime) と F702W の
         レスポンスをある重率で足し合わせた仮想的なフィルターで観測した画像と同等である。
         この「仮想的フィルター」のレスポンスを正確に知っておかないと、(2), (3) で見たように、
         特に遠方銀河の等級の評価の誤差が大きくなる。
         仮想的フィルターのレスポンスを作るには両者の重率を知る必要があるが、そのためには
            ・積分中の R(Suprime) の平均の throughput (フィルター + 望遠鏡 + 大気の透過率)
            ・HST の throughput (フィルター + 望遠鏡) 
         という、いわば絶対感度を知る必要がある。HST の値はわかるとしても、大気の透過率を含めた 
         Suprime-Cam の平均の throughput を知るのは難しいのではないか。
    
         別法として、もし CL0939 の視野に 5500-8500 A での SED (もしこの範囲で SED が滑らかであれば、
         カラーでも間に合うかもしれない) のわかっている天体があれば、それを使って重率を求めることは
         できるが…
    

    shimasaku@astron.s.u-tokyo.ac.jp