Sloan Digital Sky Survey (SDSS) Early Data Release

■はじめに

日本参加グループ(東京大学、国立天文台、名古屋大学、東北大学、宇宙科学
研究所、日本女子大学に属する研究者)が米欧の研究機関と共同して進めてき
た、銀河の広域撮像分光サーベイである SDSS が、試験観測期に取得したデー
タを6月6日より公開しますので、ここにお知らせいたします。

SDSS は全天の4分の1に相当する領域を5つのバンドで撮像して、1億個以
上の天体の位置と明るさを測定します。さらに、その1億個以上の天体の中か
ら約100万個の銀河とクエーサーに対しては分光観測を行ない、赤方偏移を求
め、詳細な銀河の3次元地図を作成するプロジェクトです。

1998年5月の撮像観測のファーストライト、1999年5月の分光観測のファースト
ライト以来、観測システムの調整を行なうと同時に観測を進めてきています。
ご存知の方も多いと思いますが、2001年4月にはz=6.3にある最遠のクエーサー
を発見するなど大きな成果を挙げています。

サーベイがすべて終了するには約5年かかりますが、その間にもSDSSのデータ
を有効活用していただくために、このたび、試験観測期に取得されたデータを
Early Data Release として研究者および一般に公開することになりました。
サーベイの進行に応じて、今後も1年から1年半おきに順次データを公開する
予定です。

Early Data Release で公開されるデータは5つのバンドでの画像、すべての
検出された天体について測定されたパラメータ、スペクトル、赤方偏移、およ
び、その他の分光パラメータです。これらのデータは試験観測期に取得したも
のですが、広く科学的研究に利用できる質のデータとなっています。以下のよ
うに、データにアクセスするためのいくつかのインターフェイスを用意してい
ます。

2001年6月6日
SDSS日本参加グループ(JPG)
広報担当 池内了

■データの内容

○データの観測領域
以下の2つの領域を観測した撮像データを公開しています。

・天の赤道帯:
南北方向に2.5度の幅で、赤経23時から4時まで (1998年9月の観測)
赤経10時から16時まで(1999年3月の観測)
合計約400平方度。

・SIRTF サーベイ領域:
赤経17時20分、赤緯+59度を中心とする約60平方度の領域(2000年4月の観測)

分光データについては、それぞれの領域で1平方度あたり約100個の
割合で銀河とクエーサーのスペクトルを公開しています。

○データの内容
Early Data Release では以下のデータを公開しています。

・撮像パラメータと分光パラメータ

- 検出されたすべての天体についての撮像パラメータと光度分布
位置、明るさ、大きさ、形などのパラメータ(1天体あたり約300種類)が
1000万個以上の天体について測定されています。

- 分光パラメータ
赤方偏移、ラインの同定、分類などのパラメータ(1天体あたり約30種類)が
約55,000個の天体(大部分は銀河、クエーサーは約5,000個、星や未同定の
  ものもあります。)

・カラー画像とスペクトル画像

- 3色合成された天体の画像
- ライン同定された天体のスペクトル画像

・画像とスペクトルのピクセルデータ

- 等級および座標が較正された5つのバンドでの画像
0.4秒角/ピクセルのcorrected framesと1.6秒角/ピクセルのbinned images

- 検出されたそれぞれの天体のまわりを切り出したピクセルデータ(altas images)

- 明るい星やバッドカラムなどマスクされた領域のマップ(mask images)

- フラックスおよび波長が較正されたスペクトル
波長範囲は3900-9100Åで、分解能はR=1800

○データの取得先
データは以下のサイトから取得することができます。
http://www.sdss.org
http://archive.stsci.edu
http://sdss.nao.ac.jp(近日公開予定)
http://sdss.mpg.de(近日公開予定)

○データの取得方法
データを取得するために以下の3つのユーザインターフェイスを利用できます。
ただし、それぞれのインターフェイスに予定されている機能が現時点で100%
利用できるわけではありません。順次充実させて行く予定です。

・SkyServer Navigation Tool
SkyServerはSDSSがマイクロソフト社と共同で開発したもので、大変使いやすい
インターラクティブなインターフェイスです。英語、日本語、ドイツ語の3ヶ国語
の版があり、ホームページの国旗をクリックすると切り替えられます。
このインターフェイスを使って、天体の画像とスペクトルを見ることができま
す。画像の上でクリックしたり、メニューから選択したりすることで簡単にデー
タにアクセスできます。
SkyServerではSDSSのデータを天文学の教育と普及に役立てるため、学校と一般
市民向けのページも計画されていますが、これは現在作成中です。これまで誰も
見たことのない宇宙の画像とデータを使って、中学、高校、大学レベルの演習に
使える研究課題を作成する計画です。

・SDSS Query Tool
このインターフェイスを使って、撮像と分光のパラメータのデータベースで
ある Catalog Archive Server に対する検索を簡単なテキストエディタを
使って編集し、実行することができます。

・MAST (Multi-mission Archive at STScI) Interface
このインターフェイスを使って、位置やその他の条件に従ってピクセルデータ
(corrected images、binned images、altas images、mask images、spectra)
に直接アクセスできます。